共産党員であるかとか,共産党を支持しているかの項目に「イエス」と記さないようにとの注意をまもり,アメリカ行きのビザは問題なく取得できた。
給油を行うハワイに着陸すると突然,太陽の光が空から身体全体に覆いかぶさってきた。強い光,熱い空気,真っ青な広い空。別世界に足を踏み入れたことを実感する。
入国手続きが行なわれるというので神妙に並ぶ。
列の前に並んでいるのは僕と同世代の若者。彼の順番が来て,係官にいろいろ質問されている。
アメリカに行く目的は? 旅行,留学,仕事?
問題ない答え方はいつも観光なので,ツーリストと答えている。
係官は,どこか学校に行く予定はあるのか,と質問。
「いいえ」
係官はさらに続けた。「もし語学学校などに通う機会があったら行きたいですか?」
「ええ,行けたら・・」
僕より頼りない英語で答えていたので彼がどの程度理解していたのか知る由はない。
それでも係官に,「残念ながらアメリカには入国できません。次の便で日本へ帰ってください」と言い渡され,ビザがあるにもかかわらず彼は入国拒否された。
あっけにとられた彼は涙ぐんでその場を離れるしかなかった。
僕の順番だ。
同じような質問をされるが,前の彼との応答を聞いていたこともあり,アメリカ旅行のみを強調する。しかし,僕の航空券は片道切符だったので質問は延々と続き,旅客全員が終わっても僕だけ残されていた。
最後に言われた。
「あなたの選択肢は2つ。日本に即帰るか,ロサンジェルスの移民局で改めて面接するか,しかしロサンジェルスまで行っても入国できるとは限りませんよ。」
ロサンジェルスまで行きたい旨伝えるとパスポートを取られた。アメリカ入国後,速やかに移民局に出頭することに決められた。
ようやく終わったとき,飛行機はすでにタラップを離れ,滑走路に動き始めていた。
しかし,僕を待っていてくれたらしいアメリカ人の若い女性職員から「急いで!」と声をかけられて一緒に走って外に出る。青い熱い空が目に染みる。
なんと彼女が運転する車で飛行機を追った。追いつくなり,僕だけのために飛行機は止まり,改めてタラップが降りて来た。そして危機一髪で搭乗することができた。
翌日,ロサンジェルスの移民局へ行く。
係官はただ,「ご旅行ですか? じゃぁ良いご滞在を!」と,僕のパスポートを出して渡してくれた。
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