俺は生まれも育ちもケンタッキー

アリアンス・フランセーズのフランス語の授業で出て来たシャルトルという町。大聖堂が素晴らしいらしいという,それだけの理由で訪れた。

 結局,大聖堂は少しだけ見て,後は鉄道沿いの寂れた街の一帯をあるき廻っただけで,宿泊先のユースに向かった。

フランスのユースホステルで会員証の提示を言われたことはないし,規則も無いに等しいほど緩いので気楽だ。シーツは持っていることを伝えると宿泊料金はさらに安くなる。キッチンでインスタントスープを作り,バゲットを添えると,まぁ安上がりで腹も満たせる夕食になる。

広間で寛いでいるとギターを弾いている人がいたので,よしっと,ブルースハープを取り出して吹こうとしたけれども,せっかくギターのキーを合わせてもらったのに,下手くそな僕のせいでで上手くいかない。近くにいた若者が僕を見ているので聞いてみた。「ブルースハープ,吹ける?」

答えがすごかった。「俺はケンタッキーから来たんだよ!」

ケンタッキーに生まれ育った人間で,ハーモニカを吹けない人なんているはずないよ,と言わんばかり。まさに,My Old Kentucky Home。

達者ではなかったけれども,さりげなく吹くケンタッキー男のハーモニカは味が合った。いつでもすぐに楽しく歌える自分の郷里や国の音楽や歌があった羨ましいと感じた。僕にとって,そんな日本の音楽や歌は無いな,といつも思う。

 

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