日本では総理大臣の選挙があるらしい。
バック音楽を聴くためにYouTubeを開くと日本発の関係ないサイトもいくつか出てくる。これまでは兵庫県知事に関するサイトだったけれども,今日は総理大臣選挙の候補者の説明がライブで流されている最中だったので開いてみた。
39歳以下の人たちが最も関心を持っている,ネットで集めたテーマについて話してもらうということだった。
候補者全員がひとりひとり説明していたので,台所を行ったり来たりしながら,なんとなく聞いていた。
災害時のテーマでは,避難施設の改善,避難者のプライバシーの尊重,デジタル情報を駆使した避難者ひとりひとりの個人情報に沿った世話とか薬の提供とか,とにかく災害時に自宅を出た避難者が宿泊する場の細かい待遇について,「私が総理になったらこうする」ことが次から次に説明された。
僕としては「エッ!こんなことで点が上がったり下がったりするの?」という印象を抱き,驚いたけれども,落ち着いて考えると,これまでの災害時の避難施設の状況に対して「政府」に対する批判が多かったのかもしれない,その結果として改めるポイントを挙げる必要があったのだろう。
しかし,災害時の避難施設の準備ならば理解できるけれども,細かい待遇まで政府が責任を負い,ましてや総理大臣が考えなければならないのだろうか?
政府には責任などない,総理大臣もそんなことは考えなくてもいい,と思う僕のほうがおかしいのだろうか?
もし僕自身や家族に災害がふりかかり,自宅を出るはめになったら,寝る場所さえあれば有難いと思うに違いない。1日や2日,食べるものがなくても生き延びることができるだけで文句などいわないだろう。
多くの人たちが被害にあう不慮の自然災害が起こったら,簡易宿泊場所を速やかに準備する責任は政府または自治体にあるかもしれないけれども,それぐらいは当然行ってくれるものと信頼している。
「備えあれば憂いなし」は最もだし,橋梁,堤防,道路,河川などの社会資本において自然災害を受けるリスクがあるにもかかわらず保守や修理などを怠っていたならば,政府などの責任が問われてもしかりというのはいえる。
しかし,待遇まで政府に責任という考えは少なくとも僕には皆無だ。総理大臣には,もっともっと重要で,もっともっと困難な業務が数多くあるはずだ。
想像するに,吉田茂や田中角栄だったら,「そんなことはワシは知らんよ。災害時のことは考えているかいと大臣に聞いたことはあるけど」のような回答だったのではないか。
もし,災害時の簡易宿泊施設の待遇において人々が不満の声を政府に対してあげていたとしたら日本政府のほうが気の毒だ。
日本に一時帰国した折に見た新聞の投稿欄を思い出す。
バスに忘れ物をした人が「お忘れ物ないようにというアナウンスがなかったから私はバスに忘れ物をしてしまった」とバス会社の運転手への訓練不行き届きという苦情を述べていたのだ。無風が当たり前と思い,自分で自分を守ることは当たり前とは思っていない人が増えたのだろうか。
それとも,または同時に,総理大臣という人は国会議員にあらゆる側面から叩かれるので,多様なテーマに対する回答を暗記しているのだろうか。
YouTubeページにはこの総理大臣候補者番組の隣りに,小泉進次郎を総理にするなとか,小泉さんに反対するタイトルのサイトがいくつか並んでいた。
僕は小泉さんがどんな人なのか,どんな政策を掲げている人なのか全く知らない。ただ,駅前の拡声器から流れる,うるさいだけの訴えでも,一定の反応が得られるから続けているように,ネット上でどんどん反小泉論が投げかけられることによって反小泉者が増えるのは気の毒だと思ったので,この人の政策の是非を判断するために,ひとつのサイトを開けてみた。
曰く,「小泉さんは,私はこの目で見て,この耳で聞きました,なんて言うんですよ」と茶化すように笑いながら話す人がいるかと思えば,「この人は左翼ですよ,左翼」などと一方的に叫び始める人がいる。この人たちは国会議員なのか,いずれにしても政治家らしい。
こんなにも程度が低く,品が悪い政治家がいるのか。これが普通ならば尋常な政界ではないという思いにかられた。彼らは国民に選ばれ,一定のキャリアを積み,出世している人たちなのだ。とても嫌な気持ちになって,そのサイトは開いて数分でまた閉じた。
ところで,中近東諸国を旅すると,賄賂を渡すことをいつのまにか覚える。役人が多い。バックパッカーの旅の本には注意書きもある。思い出すのは,日本への旅についての項だ。
「日本では,何があっても入国検査官や警察など公務員に絶対に金を渡してはいけない。日本ではチップなどの慣習もなく,公務員に金など差し出すと賄賂として即逮捕される恐れもある。賄賂が通用するのは,日本ではもっともっと上の人間だけだから・・・」
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