旅と滞在

とても日本人らしい小澤征爾さんだと思うけど

ほんの数日前,欧米では通用しない引っ込み思案という感じで,これでもかと日本人の国民性を厳しく評している記事をいくつか目にした折,違うと思うけどなぁとぶつぶつと独り言をつぶやきながら頭に急に浮かんだのは虫の知らせか,なぜか小澤征爾さんだった。

というのも,昔読んだ,誰だったか数学者の方と小澤さんとの対談の中で,「君と僕はパリのアリアンスフランセーズでフランス語を勉強してたとき,いつも教室の一番後ろで先生にあてられないように隠れてたよなぁ」というような記載があったのを思い出したからだ。
西ベルリン滞在中はいつもホテル・ケンピンスキーに宿泊していた小澤さんは,グルメレストランの多いクーダムのど真ん中にいるのに,向かいのビルの地下にある中華料理屋でいつも食事していたらしい。「いやぁ,カラヤン先生にはいつも,お前いい加減にドイツ語覚えろよ,と叱られてねぇ」などという描写もあった。
絶対ボスの権化のようなカラヤンとは異なる(ひょっとする東洋的な)リーダーシップをベルリンフィルで披露し始めた時期だったかもしれない。

貨物船で長旅の末,やっとたどり着いたマルセーユからはバイクでパリに向かい,いっちょびらの貸衣装でコンクール(ブザンソン?)優勝を手にした武勇伝は,海外生活を夢見るぼくらに大きな希望を与えてくれた。少し恥ずかしがりやというのも本当だろうし,欧米のオーケストラの楽員たちからも,指揮者としてだけではなく,人間的にも信頼を得ていたのも十分に想像できる。

昔見たテレビ番組や対談などからだけの印象だけれども,小澤さんは日本人離れどころか,とても日本人らしかった。欧米識者が日本でしか通用しないと指摘する国民性をどっぷり備えていても,世界中で互角に活動している日本人はいくらでもいるような気がする。

小澤さんの訃報に関するドイツのラジオのニュースでは,音楽仲間の,「茶目っ気があって,どんな人たちとでも大きな興味を持って接する子供のような・・」という解説もあった。
そういう点も,コスモポリタンの要素かなぁと改めて考えたり・・

 

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