ちょうど先週だったか,きっかけなど無いのになぜか,遠い昔に周りの仲間たちが何かあると話題にしていた蟹工船が頭に浮かび,ノンポリ仙人のようなナイーブな僕は関心が薄かったことを恥じ入りながら小林多喜二について調べていた。
そして,なぜ,理由はともあれ,権力の正当な行使として究極の屈辱のなかで人間が殺されることが現代の社会で許され得るのか考えていた。
政治に深い関心がない僕も,考えても考えても政治を理解できない僕も,若いころからあまり変わっていない。
ただ,瀕死の状態だったナワリヌイ氏がベルリンのシャリテ病院を退院したとき,僕は心のなかで彼に「ロシアに絶対に戻るな!」と叫んでいたのははっきりと覚えている。
理由はただ,ロシアへの帰国は自殺行為に等しいので,「あなたのような人は生き延びることがまず大切なのではないですか,死んだら無になるだけ」と思っただけだ。
ベルリンのシャリテで治療を行うことが許可されたのは大きなチャンスだった。
ドイツは,彼がドイツ滞在(亡命)を望むならば受け入れると言っていたはずだ。
9割の確率で,ロシアに戻ったら即逮捕される。即逮捕を免れてもいつか暗殺される。運よくそれらを免れても活動できる可能性は皆無だから,ロシアに戻る意味はない,という確信が僕のなかにあった。
彼のことなど知らないのに,当時のニュースを見ながら,僕の心は熱くなっていた。
今のロシアに戻ったら即逮捕されることを知っているのですか?
小林多喜二
アレクセイ・ナワリヌイ
今,シベリアの刑務所で亡くなった,という速報が流れてきた。
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